塩江の風と、再生の旅

長い間、眠れぬ夜を過ごし、心も体も疲れ果てたお客様。時間の感覚も薄れ、ただお酒に身を委ねる日々。そんな中、「話を聞いてほしい」との依頼が届いた。
行き先は塩江温泉郷。自らの力だけでは辿り着けないその地へ、僕はお客様とともに向かった。4泊5日の療養。少しでも心と体を癒し、回復への一歩を踏み出せるように。
準備を手伝いながら、荷物の中に忍ばせた一升瓶に気づく。まだ、お酒が手放せないのかもしれない。でも、それでもいい。大切なのは、この場所に来ることを選んだという事実。変わるうとする意志が、確かにここにある。
お客様は少し休むというので、お客様のおすすめの「いこい食堂」へ。僕は初めて訪れたその店で、ニンニクの効いたピリ辛スープの中華そばと、優しい味わいの卵丼を頬張る。お腹も心も満たされる。常連客で賑わうその店には、地元の温もりが詰まっていた。

この旅は、お客様のためだけではない。僕自身のエネルギー補給にもなった。有り難い。
塩江の風が、心をゆっくりとほぐしていく。回復への道はまだ続く。でも、たった一歩でも、踏み出したことに意味がある。
そうじて、今日もそばに寄り添う。

スタッフK

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